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起こしてしまったのか、それともキスまで気づかれてしまったのか。
廊下から差し込む明かりだけの暗い部屋では、彼の目の焦点が合っているのかどうかまでは見えなかった。
驚愕して身を引こうとした私の腕を和樹さんが掴んだ。
「あの、ごめ……んんーっ……」
もう一度謝ろうとした私を彼の腕が強引に引き戻し、唇を塞いだ。
唇の隙間を割られ、舌が深く入ってくる。
結婚式の時のキスしか知らない私にはこんなキスは初めてで、頭の中が真っ白になった。
彼の上に覆い被さっていた体勢はいつのまにか逆転し、彼が上になっている。
二人の吐息と水音が充満する部屋に、グラスがゴトンと床に落ちる音が響いた。
彼は酔っていて、相手を間違えているのだろうか?
頭の隅に浮かんだ考えは、キスの激しさに散っていく。
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