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彼からの贈り物に勇気をもらい、ほんの少し欲張ってみる。
「あの……てっ、手を繋ぎたいです」
ああもう嫌だ。
どもってしまった瞬間、走って逃げたくなった。
気合の入りようがばれてしまい、本気で格好悪い。
でも、〝やっぱりいいです〟と言おうとした私の手を、和樹さんの大きな手が拾い上げた。
「手を繋ぐのは初めてだね」
泣きたい気分から一転、嬉しくてぼうっと夢見心地になる。
「和樹さん」
「なに?」
「あの……お花、嬉しいです」
幸せです、と口にしかけて飲み込んだ。
私のせいで彼が誰かとの未来を失ったのだとしたら……?
「あれから二十年。いや、もっとか」
独り言のように呟いた彼の手を、黙って握り締めた。
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