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太陽は西の空に沈もうとしていて、茜色の空には巣に帰る鳥たちのさえずりとヒグラシの声が響いている。
玄関脇のデッキに腰かけて二人で夕焼けの景色を眺めた。
近くの枝では二羽の鳩が身を寄せ合っていた。
鳩は生涯、つがいを変えないと言う。
相手を失うと、孤独に耐えられず死んでしまうこともあると聞いたことがある。
どうかあの鳥たちがこの先ずっと飢えや苦しみや孤独から遠ざかっていられますように。
東京でも見られる風景なのに、ここでは感受性が強くなるのか、彼に寄り添いながらそんなことを考えた。
「月が出てる」
彼が空を指さした。
見上げると、薄青い空に丸い月が浮かび上がっている。
「満月?」
「少し欠けてるんじゃないかな」
「待宵月ですね。綺麗な和歌がありましたね。はっきり覚えていないんですけど」
すると彼がその和歌を諳んじた。
「すごい! 何でわかるんですか? 和樹さん、文学部でもないのに」
「高校で習わなかった?」
「普通忘れますよ」
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