目隠しの愛ー3

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ここに来る前、普段はスケールの大きな仕事に携わっている彼にとって、私と過ごす一週間はとても退屈なのではないかと不安だった。 でもやっぱり静かな別荘にして良かったなと思う。 ここには東京よりゆっくりと時間が流れているようだった。 「明日の予定がないっていいもんだな」 空を見上げ、和樹さんが言った。 「あ、でも、行ってみたいところがあるんですけど」 「どこ?」 「ステンドグラス美術館」 「じゃあ明日はそこに行こう」 「ほら、明日の予定が入っちゃいましたよ」 「一つしか予定がないっていいもんだなあ」 ふざけて私が突っ込むと、和樹さんはわざとらしく言い直した。 「まだあるんです。ラスク屋さんと、あと御用邸が管理してる森」 「じゃそこも」 「あと、那須じゃないですけど、日光東照宮にまだ一度も行ったことがなくて」 「おいおい」 和樹さんが苦笑した。
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