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身体を重ねることで距離が一気に縮まり、安定したせいだろうか。
暗黙のタブーだった宏樹さんのことを自然に話せるようになっていることに気づき、安堵した。
実の兄弟なのだから、いつまでも避け続ける訳にはいかない。
「もし宏樹さんが帰ってきたら、宮瀬のご両親はどうなさるんでしょうね。お父様はまだカンカンですよね」
「うーん……。昔から兄は許しを請うのは得意だけど、今回はさすがに帰るに帰れないだろうな」
「いずれ穏便に解決すればいいですけど……和樹さんのご両親のためにも」
相槌を打ち、窓の外に視線を向ける。
時折現れる緑の道路標示は、徐々に那須のインターチェンジが近づいてきたことを示している。
「あと十五キロ。もう着いちゃうなんて」
和樹さんとのドライブがもうすぐ終わってしまうことに、私は溜息をついた。
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