第1章

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◆ ◆ ◆  飲み会は三時間程でお開きとなり、店の前で帰途につく者と、二次会に繰り出す者に分かれた。みんな泰輔が二次会に出ないことを残念がったが、多忙かつ大切な時期であることは充分承知しているため、誰も無理強いはしなかった。 「佑はどうすんの?」  草壁に訊ねられ、少し迷ってから「やめとく」と答えた。 「ノリ悪ぃなあ」 「ごめん」  申し訳ない、と両手を合わせると、「また今度飲もうぜ」と草壁は笑って肩を叩いた。  ほとんどが二次会に向かったので、俺を入れて五人くらいが駅に向かって歩き出した。三人が先に前を歩き、俺と泰輔は少し遅れてそれを追う。 「なあ、泰輔」  駅に近づくにつれ、胸が塞いでいった。ひどい消化不良のようなものを感じる。それに耐え切れず俺は足を止めた。 「どうした?」  泰輔が俺に倣って立ち止まる。 「もうちょっとさ、話してかない?」  遠慮がちに切り出すと、泰輔は黙り込んだ。他のメンバーが泰輔を気遣って二次会に連れていかなかったのに、それに背くような……抜けがけをしている罪悪感が滲む。 「いや、泰輔練習で疲れてるだろうし、明日からも忙しいのはわかってるんだけど……その、大事な時期だからこそ話しておきたいっていうか……」  言い訳の言葉が次から次へと口からこぼれる。 「なんていうかさ、寂しいじゃん! これから多分、なかなか会えなくなるし」  まるで自分が、本音を隠して好きな相手を引き止める女の子みたいに思えてきて、照れくささから冗談めかして泰輔の胸を拳で叩いた。なかなか反応を見せない泰輔を不安に思った時、ようやく「それもそうだな」と返事が聞こえた。
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