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泰輔の住むマンションは、本人の申告通り高層ビルでも億ションでもなかったが、所属するチームのホーム球場に程近い、高級住宅街として名前があがる場所にあった。泰輔は自宅について、「うるさくなければ特にこだわりはなかったけど、セキュリティがしっかりしたところにしろとアドバイスされた」と説明した。
清潔感のあるエントランスには、小ぶりのツリーが飾られていた。
最上階である五階の、2LDKの広々とした部屋は、引っ越ししたばかりということもあるだろうが、相変わらず物がない。
「佑輝、何か飲むか? 腹は空いていないか?」
「いや、いいから、とりあえずコート脱げば?」
苦笑しながら指をさすと、泰輔は一瞬動きを止めてからコートを脱ぎ始めた。俺はすでに脱いでいたコートをソファ―の背もたれに、持っていた荷物を座面に置いて、締め切られたカーテンへと近づいた。
カーテンを少しめくると、そこはベランダで、遠くに街の灯りが見えた。
「いい結婚式だったよな」
「ああ」
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