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「泰輔、座れば?」
自分の分のマグカップを手に、立ち尽くしていた男に声を掛ける。「え、ああ」と硬い声で返して、泰輔は俺と少し距離を開けてソファに腰かけた。
「昔さ、みんなでクリスマスパーティーやったことあったよな。大学一年か?」
「ああ、やったな」
「確か下田がクリスマス直前で彼女に振られて、落ち込み過ぎて見てられなくてさ」
「そうだったな」
「わざわざ百均でツリーとかまで買ってきて、コンビニケーキとチキン食ってさ」
ナイロンとプラスチックでできたツリーを囲んで、ヤケクソのジングルベルをみんなで合唱した記憶がある。
「そうだ。ツリーにさ、願い事書いてつるしたよな。七夕かよって爆笑しながら」
「大半が『彼女が欲しい』と書いていた」
「そうそう。……あれ? 俺はなんて書いたっけな。泰輔は?」
「俺は『全国優勝』で、佑は『プロになる』だ」
「よく覚えてんなぁ」
笑いながら、サンタが描かれたクッキーを口に入れた。静かな部屋に咀嚼する音が響く。
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