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「佑、寝たか?」
暗闇の中で、ぼそりと声が落ちる。
俺は少し迷って、それに答えなかった。目も閉じたままでいた。
再びベッドが揺れて、わずかに何かが頭に触れる感触がした。何度か繰り返されて、それが泰輔の指だと理解する。遠慮がちに髪を数回撫でて、すぐに離れていった。
もう一度マットレスが揺れて、泰輔がベッドから下りたのが伝わった。トイレに行ったのかと思ったけど、十分経っても、三十分経っても、戻ってこなかった。
俺はそのうち眠りに落ちて、早朝に目が覚めた。カーテンのすき間からは光が漏れていなくて、まだ夜が明け切っていないことを知る。隣には、誰の気配もしない。
借り物の大きすぎるスウェットを着たまま、寝室を出た。
リビングに足を踏み入れると、ソファの上で毛布を被って眠る泰輔がいた。長い脚はアーム部分に乗り上げてはみ出している。規則正しく呼吸を繰り返し、それに合わせて胸が上下する。
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