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きっと、俺が起きだしてくる頃には、先に起きていたていで接して、夜中にベッドを抜け出した事実をなかったことにするつもりなのだろうと思った。
その行動が意味するところを、そして、夜中にそっと髪に触れた理由を、端正な寝顔を見ながら考えた。
泰輔を起こさないようにベランダに近づき、カーテンを少しだけめくる。ガラスの向こうの空は、まだ日が昇り始めた頃で、藍色と橙色のコントラストが広がっている。そこに一つだけ強く輝く星が浮かんでいた。
カーテンを戻して、音を立てないように寝室へ向かう。ベッドに逆戻りして、目を閉じた。
俺がこの部屋で生活を始めるようになったのは、それから三カ月後のことだった。
【END】
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