【番外編】光射す

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 飛行機で二時間。そこからバスとフェリーを乗り継いで、第二の故郷にたどり着いたのは夜の八時前。授業を終えたその足で空港に向かって、ギリギリ最終のフェリーに乗り込める。  金曜日の夕方から移動して山のコテージに泊まり、土、日と練習を見て夕方に帰京。平日は学校とバイトだ。そんな生活を始めて一カ月半になる。  休みのない日々は体力的に楽とは言えないが充実していた。それに泣いても笑っても、最後の夏までもう二カ月もない。自分にできる精いっぱいで、選手たちをサポートして勝たせてやりたかった。  部員のお母さんから差し入れされた夕食を食べながら、コテージでナイター中継を見る。  七回裏、泰輔が所属する京浜レオパルズは二点を追う展開だった。相手チームの守護神は開幕から絶好調で、この日も例外ではない様子だ。  それとは反対に泰輔は今季、開幕から調子が上がらない。絶不調というほどではないが、調子にむらがある。打つときは打つし、なんなら日々の熱心なトレーニングのおかげで飛距離が伸びているくらいだ。だけど時折、かくんと調子を落とす。守備も攻撃もぱっとしない。  結局その日は九回でさらに点差を広げられ、レオパルズは負けた。
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