【番外編】光射す

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 泰輔に食事を作るのは、家賃代わりというよりも自分にとって勉強の意味合いが強い。  トレーニング面のサポート、ボディやメンタルのケア。選手を支える仕事は多岐に渡るし、どこに重点を置くのかはまだ定まっていないけど、やはり身体を強化する基本は食事にあると思う。まだ学校に通い始めて間もない身分で、現役プロ選手のサポートができるのは責任重大だけどとてつもなく勉強になる。  筋力やスタミナの増強には食事がカギになるし、疲労回復のためには適切なエネルギー補給が不可欠だ。 一週間ごとに献立を決めて、泰輔のコンディションを見ながら微調整している。色々工夫をこらしているつもりだけど、まだまだ力不足は否めない。  ずっと絶好調でいられる選手なんてまずいない。誰にだってスランプはある。だけどそうならないように、そこから抜け出せるように支えるのが、自分が今後目指す仕事だと思っている。  だからこそ考える。今の自分が、泰輔と暮らすことは泰輔にとってプラスなのだろうか。  一緒に暮らして始めたからと言って、関係性が劇的に変わったわけではない。部屋を一室間借りしている状態だし、そもそも月の半分くらい、泰輔は遠征でいない。  壊れてしまった友人関係のやり直しをしている。その表現が一番近いようでいて、だけどやっぱり違う気もした。
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