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手を洗ってご飯を盛ろうとしたら、座ってろと言われたのでお言葉に甘えることにした。テーブルで待っていると、すぐに白飯と味噌汁が運ばれてきて、揃って箸を取った。
「ってか、腹減ってただろ? 先に食っててくれて良かったのに」
「そんなに待っていない。それに俺は来週から遠征だから、一緒に食べたかったんだ」
「そう?」
わずかに首を傾けながら尋ねたら、泰輔はしっかりと頷いた。
「んー、やっぱ泰輔のがうまいんだよな、料理」
揚げ出し豆腐を咀嚼して、少々複雑な気持ちでつぶやく。美味しいのは喜ばしいことだけど、やっぱり悔しい。
「まだまだ修行が足りないよなぁ。回数よりセンスがもの言うのか」
「そんなことはない。いつも美味いし、助けられてる」
口の中の物をちゃんと飲みこんでから、泰輔が力強く言う。
「そう言ってもらえると嬉しいけどさ」
「俺の方こそ、こんなにサポートしてもらえているのに、振るわずにすまない。もっと練習する」
泰輔の顔は真剣だった。真剣どころか、どこか追い込まれて、自分を責めるように眉間に皺が寄っている。
「もうすでにこれでもかってくらい練習してんじゃん」
おどけたように笑ったけど、泰輔の表情は変わらないままだった。
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