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夕飯を食べてから風呂に入って、リビングのソファでノートパソコンを開く。
練習試合を終えての反省点の洗い出し、それを踏まえての練習メニューや戦術の模索。他には専門学校の課題や、泰輔の食事の献立決め。長時間の移動の間にも、やれることはやっているつもりだけど、それでも時間が足りない。
一週間の疲労が眠気となって圧し掛かり、段々とまぶたが重くなる。少しだけ横に、そう思ってしまったが最後だ。すぐに意識が遠のいていく。
気づいた時にはふわふわと身体が揺れていた。
膝の裏と背中を、何かがしっかりと支えている。
――あ、泰輔か。
どうやら寝落ちした自分を部屋へ運んでくれているらしい。
鍛えているとはいえ、俺なんか運んで万が一どこかを痛めたらどうするんだ。曖昧な意識でそう思っても、言葉にはならない。脳がうっすら起きていて、身体は完全に寝ている感じだ。
――そういえば、昔もよく泰輔の部屋で寝落ちてたっけ。
髪を乾かしてから寝ろとか、寝るならベッドへ行けとか、よく言われていたことを思い出す。
程なくして身体が大きく揺れて、ベッドが軋む音がした。きっと俺が間借りしている部屋。
そっとシーツの上に下ろされ、支えていた腕が抜け出ていきかけて、ふと止まった。強い力で、ぐっと抱き寄せられる。
あったかい。
そう感じた瞬間、腕の力が弱まり身体の下から抜け出ていく。布団に覆われる感触がしたあと、扉が閉まる音が静かに立った。
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