【番外編】光射す

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 一進一退の攻防は小気味よい打撃音で決着がついた。 「走れっ、いける! 回れ回れ!」  思い切り叫んだ。宙を舞った白球がグラウンドの遠くを転がった。ベンチの部員たちも叫びながら腕を振り回す。二塁にいた選手が、ホームに駆け込んで、打者が二塁、三塁を蹴ってホームを一直線に目指す。キャッチャーがミットを構えた。スライディングで突っ込んだ時、キャッチャーがボールを取って素早くランナーの身体をミットで叩く。  きっと一秒もない時間が、何十倍も長く感じた。審判が勢いよく両手を左右に振ってセーフをコールした瞬間、全員で飛び跳ねた。  最後はその追加点でついた一点差を守り切って、チームは記念すべき公式戦初勝利をおさめた。  全員、全国制覇でもしたかのような喜びぶりで、少し落ち着けとたしなめるが、「佑さんのために勝ちたかった」と言われれば、思わず抱きしめて頭をグリグリしてしまう。  その一勝に勢いづいて、翌週に行われた二回戦でも勝利して、三回戦に進むことになった。
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