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「佑輝」
荒い息遣いのまま、泰輔は俺の耳の付け根に何度も口づけてくる。
「汗臭いだろ」
「気にならない」
泰輔は即答して、さらには首筋に鼻先を埋めて深く息を吸い込む。
「こら、嗅ぐなって」
拳で軽く後頭部をノックする。泰輔はにおいを嗅ぐのはやめたが、今度は唇で触れてきた。まるでそこから甘い蜜でも出てるみたいに、夢中で吸い付き、舌を這わせる。
「なあ、ベッド行く?」
言った瞬間、泰輔の動きがぴたりと止まった。緩慢な動作で首筋から上げた顔は、困ったようにしかめられていた。
「泰輔?」
呼びかけると、泰輔は俺の左手をぎゅっと握りしめてくる。
そのまましばらく黙り込んだあと、ようやく口を開いた。
「勃たないんだ」
「え?」
予想外の告白に思わず泰輔の顔を凝視する。
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