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「勃たないって、いつから?」
「二カ月くらい前から」
二カ月前といえば五月で、俺と同居し始めてから二カ月くらいの頃だ。
「俺のせい?」
専門的なことはわからないが、この歳で健康体で、そんな状態に陥るのは心因的なものが要因であることは明らかだった。
尋ねると泰輔は言葉を探すみたいに、何かを言いかけては口を閉じる動作を繰り返した。
「怖かった」
ぽつりとその一言が落ちると、席を切ったように話し始める。
「もう二度と会えないって、佑輝の声を聞くことも、笑った顔を見ることも二度とできないって思ってた。だから、またこうして傍にいてくれるのが夢みたいだった。それだけで十分だって、確かに思ってたのに」
手を握る力が強くなる。
「今度こそは絶対間違えない。絶対に傷つけたくないって思うのに、それでも傍にいると佑に触れたくなる自分が怖くて」
きつく目を閉じて話す泰輔は、懺悔をしているように見えた。
「自己中心的で欲まみれで、こんな俺のままじゃ、佑は今度こそ軽蔑しきって嫌になるはずだ」
まぶたを開いた泰輔は、また俺を怯えた目で見ていた。
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