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「そんなことばっか考えて、気づいたら勃たなくなってた?」
泰輔は俺の質問に頷く。
自己嫌悪と自戒。俺が消えていた間のトラウマ。そういうものが、目に見える形で現れたのかもしれない。
「バカだな。昔と今は違うだろ?」
俺は掴まれていない方の手を伸ばして、泰輔の髪を撫でた。
「俺は自分の意思でここにいるんだ。泰輔の気持ちをわかった上で、ここにいる」
一方的な欲求を押し付けた暴力と、互いの感情が伴った接触は違う。だけど、『互いの感情』と言えるほどに、自分は泰輔の気持ちに対して明確な答えを出していない。
同居という選択が意思表示のつもりではあったものの、曖昧であることは確かだ。
過去にあった泰輔の過ちを、もう赦したと告げることは自分にはきっと一生できない。
だけど、俺が赦しても赦さなくても、泰輔が、犯した罪に向き合って一生悔いて苦しむことを知っている。
俺はそんな男と、気持ちのまま正面から向き合うと決めてここにいる。
「言っただろ。嫌なら最初からここにいないよ」
泣きそうに歪む泰輔の頬をからかうように軽く摘まんで引っ張った。
「好きだって言ってくれる泰輔と、一緒にいないと後悔すると思ったから、ここにいるんだ」
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