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久しぶりの帰宅だったのに、俺はその夜自室のベッドには入らなかった。
「嫌じゃないか?」
シャワーを浴びて汗を流した肌の上を、泰輔の指や唇がすべる。
「ン……大丈夫」
胸の突起をざらついた指で撫でられると腰の辺りが疼く。もう一方を舌の先でくすぐられて、裏返った声が出そうになるのを唇を噛んで耐えた。
「脱がせても、平気か?」
唯一身体を覆う下着に手を掛けて泰輔が尋ねる。
いい加減、いちいち訊いてくるなと言いかけてやめた。多分泰輔には、……俺たちには必要な作業なのかもしれないと思った。
最後の一枚を取り払われると、今さらだけど気恥ずかしかった。誰かとこういう行為をするのは数年ぶりだから。
「なあ泰輔、いいのか?」
「ん?」
「なんか、俺だけ気持ちよくなる感じでさ」
泰輔は上は脱いでいるが下はスウェットを履いたままだ。
勃起しないだけで、感覚そのものを失ったわけではない。それならば、触れば感じるはずで、だけどどこまでいっても頂点に辿り着けず解放されないのは、きっと苦しいだろうと同じ男として想像できた。だから泰輔に言われた通りに触らないでいるものの、やはり引っかかってしまう。
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