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久しぶりに二人で朝食をとったあと、夜の試合のための練習に向かう泰輔を見送る。
「なあ、泰輔。俺今日までバイト休み」
靴を履き終えた泰輔は、俺の宣言に不思議そうな顔をした。学校は夏休み中で、アルバイトは今日まで休みを取っていることはすでに知っているからだろう。
「夕飯、美味いモン作って待ってるから頑張ってこいよ」
「ああ、ありがとう」
「でさ、帰ってきたら続きしようぜ。昨晩の」
茶化すでもなく、至って普通に告げたら、泰輔は俺を見つめたまま固まってしまった。
「もう大丈夫だよ、泰輔は」
もしもまだ、泰輔の症状が改善していなかったとしても、本当に改善すればいいと願って口にした。
もしもまだ、泰輔自身が俺を傷つけてしまう可能性に怯えていたとしても、今の泰輔ならそんなことにはならないと信じて口にした。
もう自己嫌悪も自戒も必要ない。
過去は消せないけど、俺たちは今を生きているから。
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