【番外編】眠らない星《完》

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「なあなあ、佑輝。こうなってみると最初にレオパルズが負けてくれててよかったよな。決勝戦生で観れるし」  会場の熱気と、試合開始前のビールで赤ら顔の下田が、俺を振り返って笑う。 「ほんと、それ。さすがに九州遠征は厳しいからな」  答えたのは、俺の隣に座る草壁だ。草壁が着ているのは五回表を迎えて守備に回った、京浜レオパルズのホームユニ。背番号は37、泰輔のものだ。  大学の野球部OB十名ほどで、泰輔の大舞台の応援に訪れたが、半分ほどが泰輔のユニを着込んでいる。ちなみに俺は普通にカットソーにジーンズで、草壁に「ノリ悪い」と拗ねられた。  互いのホーム球場を行き来するこの連戦は、負けずに決勝を迎えていた場合、相手チームのホームである福岡が決戦の地になっていた。そういう意味では、下田が言う通り負けてくれたことは確かにありがたかった。テレビ越しでももちろん応援はするが、頂点に上り詰める瞬間の空気を、一緒に感じられるのは特別なことだと思う。
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