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「夏くらいまではどうなることかと思ってたけど、ここんとこの泰輔、神がかってるよな」
「あー、春からずっと、打つ時は打ってたけど安定してなかったもんなぁ」
春先からしばらく、泰輔が調子を落としていたおおよその理由を知る身として、少し気まずいものを感じながら仲間の会話を黙って聞いていた。
試合は五回裏に差し掛かるところだった。
投手をしっかりリードし、足で掻きまわすのが得意な相手の一番打者にもしっかり目を光らせる泰輔の活躍もあり、レオパルズは五回表を無失点で切り抜けている。
「最近の泰輔は、ここぞって時に打ってくれんだよなぁ。しかも超豪快に」
「筋肉量めちゃくちゃ増えてるよな。見た目で違う。佑輝のサポートのおかげもあるんじゃねえ?」
草壁に視線を向けられて、「だといいんだけどな」と笑って返した。すると草壁の隣に座っていた後輩の和田が、「佑さん、ここはサポート代ガッポリもらっときましょうよ」と調子よく割り込んだ。
「いや、勉強させてもらってんのこっちだし。あと今、生活費全部泰輔持ちだから」
「謙虚っすねぇ。俺ならガッツリっすわ」
「つうか、いいよなぁ同居とか楽しそうで。学生時代に戻った感じでさ」
俺も戻りてぇ、と唸る草壁に、「なに言ってんだよ」と呆れた溜息をつく。
「戻ってる場合じゃないだろ。お前には可愛い嫁がいる上に、もうすぐ家族も増えるんだから」
言った瞬間、草壁の顔がでれっと弛む。和田は「くっそ、俺だって結婚したいーっ」と叫びながら、手にしていたスティックバルーンで草壁に八つ当たりをする。
「けど、ほんと仲いいよな、泰輔と佑輝は」
さらに頬を弛ませてしみじみと呟く草壁に、「まあな」と答えて笑った。
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