【番外編】眠らない星《完》

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「明日とか、テレビの仕事入るんだろうな」  ビールまみれになった泰輔がカメラを向けられる。珍しく少しだけ笑って優勝の喜びと興奮を表現する泰輔に、なんだか面映ゆい気分になった。  そして、少し安心もした。  ずっと心のどこかで引っかかっていた。  泰輔が今野球をやっているのは、自分の意思なのか。もしかすると、俺への贖罪や義務感で『やらされている』だけではないか。  インタビューに答える泰輔の背後から、外野手の二人が忍び寄り、背中に直にビールを注ぎ込む。堪らず呻いた泰輔は、「コメント中はやめなさい」と背後の二人に笑いながら怒った。  自分勝手な解釈かもしれない。だけど、チームメイトと喜びを分かち合う泰輔は晴れ晴れとしていて、俺も嬉しい気持ちになった。  ずっと中継を見ていたら飲み足りない気分になって、明日の朝食の下ごしらえは、冷蔵庫の缶ビールをちびちび飲みながらした。  ここ最近で一番いい気分だった。  ニュース番組が終わるとスポーツバラエティ番組が始まり、そこでも今夜はレオパルズ優勝ほぼ一色だった。
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