【番外編】眠らない星《完》

11/18

426人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
「酒も入ってるし……万が一歯止めが利かなくなったら怖い」  泰輔の目が、少し潤んでひどく熱っぽいことに気が付くと、今度は俺の方が後ずさりをしそうになった。 「だから今は……、佑輝に触りたくない」  泰輔は顔を掴んでいた俺の手を外し、そっと下ろさせた。 「触りたくないとか、ふつうに傷つくんですけど?」  おどけた風に言ったら、泰輔は「言葉のあやだ」と少し焦る。俺はそんな泰輔に、もの言いたげな目線を送った。 「……本当に触りたくないわけがないだろう」  黙り込んでいた泰輔は、顔を赤くしてごく小さい声で呟いた。  じゃあ何も問題ないのでは、と俺が言うより先に、泰輔が「でも今日はダメだ」と固辞する。 「自分をコントロールできる自信がない」  再び顔を背けて俺を見ないようにする泰輔に、また反発心が湧き上がってくる。  だけど、泰輔に下ろされたばかりの手を伸ばしたのは、そんな気持ちよりも、もっと強い感情からだ。 「佑輝……」  泰輔の首筋に腕を回して、触れるだけのキスをする。泰輔は抗わなかったが、弱ったみたいな顔と声で俺の名前を呼んだ。 「じゃあ、俺に触らなくていいよ。俺が泰輔に触るから」  泰輔の腕を掴んで、リビングへ移動する。つけっぱなしのテレビを消したあと、俺たちは泰輔の寝室へ向かった。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

426人が本棚に入れています
本棚に追加