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「酒も入ってるし……万が一歯止めが利かなくなったら怖い」
泰輔の目が、少し潤んでひどく熱っぽいことに気が付くと、今度は俺の方が後ずさりをしそうになった。
「だから今は……、佑輝に触りたくない」
泰輔は顔を掴んでいた俺の手を外し、そっと下ろさせた。
「触りたくないとか、ふつうに傷つくんですけど?」
おどけた風に言ったら、泰輔は「言葉のあやだ」と少し焦る。俺はそんな泰輔に、もの言いたげな目線を送った。
「……本当に触りたくないわけがないだろう」
黙り込んでいた泰輔は、顔を赤くしてごく小さい声で呟いた。
じゃあ何も問題ないのでは、と俺が言うより先に、泰輔が「でも今日はダメだ」と固辞する。
「自分をコントロールできる自信がない」
再び顔を背けて俺を見ないようにする泰輔に、また反発心が湧き上がってくる。
だけど、泰輔に下ろされたばかりの手を伸ばしたのは、そんな気持ちよりも、もっと強い感情からだ。
「佑輝……」
泰輔の首筋に腕を回して、触れるだけのキスをする。泰輔は抗わなかったが、弱ったみたいな顔と声で俺の名前を呼んだ。
「じゃあ、俺に触らなくていいよ。俺が泰輔に触るから」
泰輔の腕を掴んで、リビングへ移動する。つけっぱなしのテレビを消したあと、俺たちは泰輔の寝室へ向かった。
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