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◇ ◇ ◇
目覚めると時刻は朝の七時過ぎだった。
「あ? 寝坊した?」
寝ぼけた頭で枕もとの時計をしばらく睨んでいた。数秒ほどで覚醒し始め、隣で寝ていたはずの泰輔がすでにいないことに思い至る。
いつもなら七時になる少し前に、トレーニングのために起き出す泰輔と同じタイミングで俺も起床して、朝食の準備に取り掛かる。
慌ててベッドから抜け出して、手早く衣服を着ると部屋を出た。
「おはよう」
リビングに入ると、隅に設置されたフィットネス機器で汗を流すいつも通りの泰輔がいた。
「……身体は平気か?」
立ち上がった泰輔は、心配そうに尋ねてくる。
「いや、平気だけど……」
動くと節々は痛むし腰は重だるいが、動けないほどではなかった。
「つか、こんな日でもトレーニングやるんだ」
劇的勝利で優勝をおさめた翌日の朝くらい、ゆっくりしてもよさそうなものだ。
「毎日の積み重ねだからな。来季はもっといいパフォーマンスができるように備えたい」
そう語る泰輔の瞳には一切の曇りがなくて眩しく感じた。それが少しだけ悔しくて、ついつい俺の口はすべる。
「なるほど。その毎日の積み重ねが、揺るぎない筋肉を育んで、あんなエゲつない体位を可能にしてるんだなぁ」
一秒の間を置いて、泰輔の顔が瞬時に真っ赤に染まった。
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