【After Story】残照

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 夜のスポーツニュースで野球コーナーの取材を担当するまゆりんこと川崎万由里アナウンサーは、当然野球選手と関わる機会が多い。先月日本一を決めたチームの捕手で、MVPを取った泰輔ならば、接触する頻度は高いだろうし、そういうことになったとしても何もおかしなことではない。 「草壁もファンだったもんなぁ、まゆりん」 「あー、うん」  考え事をしていたせいで気のない返事になったけど、下田は特に気にしてないようだ。  確かにまゆりんは可愛いし、癒し系だし。可愛さに甘えず、野球を熱心に勉強していることが窺えるインタビューにも好感が持てる。泰輔が初めてまゆりんに単独取材を受けたと聞いた時は大興奮したものだ。 「泰輔って学生時代からクソモテてたけど、全然興味ないって感じでさ。真面目で練習の鬼で、なんつーか、佑輝の世話ばっか焼いてて」  はっと下田の顔を見ると、「なに?」と不思議そうな顔をされる。俺は「なんでもない」と誤魔化して前を向き直した。 「けどやっぱ、まゆりんには落ちちゃうよなぁ」  しゃーねぇわ、うん、と自分で納得する下田に、「そうだな」と返事をした。
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