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「佑さん、これ肉っス」
「サンキュー……って、え、黒毛和牛?」
恭しい仕草で差し出された和牛のパックに佑輝が苦笑を浮かべる。良い笑顔で親指を立てる和田に、佑輝は「まあいいけど」と受け取った。
「どうせ肉はあったらあっただけ食うだろうし」
「でしょ! やっぱそうっスよねー」
和田は得意げに笑う。
「佑、ビール冷蔵庫に突っ込むぞ」
「あー、サンキュ」
ビールケースを持ってキッチンへ足を踏み入れる。二人用にしては大きな冷蔵庫は最新式のものだ。扉には一週間分の献立らしきものが書かれた紙が貼りつけられている。
「すげーな、これ佑輝が毎日考えてんだよな? 栄養バランスとかカロリーとか」
「まあ、それが仕事だし。まだ勉強中だけど」
「俺、結婚してから初めて料理するようになったけど、マジで尊敬するわ」
カレーとかシチューとか一皿で済むような料理ならまだいい。バランスや品数を求めようとすると、メニューを考えるだけでもかなりの労力を要すると知った。
「向き不向きがあるしな。てか草壁、いい夫してんじゃん」
「いや、全然だって。自分はそんなことないって思ってたけど、やっぱ「家事は向こうがするのが基本」って意識がどっかにあんだよな。日々教育していただいてますわ」
おどけた風に言ったら、佑輝は「幸せそうで何より」と笑った。
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