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ちょうど鍋の準備が終わった午後四時頃、狙いすましたかのように家の主が帰宅した。朝から自主トレと雑誌の取材をこなしてきたというスポーツウェア姿の泰輔は、リビングに足を踏み入れるなり、記者に扮した下田たちに囲まれた。
「すみませーん、朝倉選手、一言よろしいでしょうか」
「川崎アナとはどういったご関係ですかー?」
「とても仲がよろしいようですが、お付き合いされてるんでしょうか?」
拳で作ったエアマイクを方々から突き出されて、泰輔は「やめろ」とそれを振り払う。
「あれはガセネタで、どういう関係も何もない」
迷惑そうな顔で息を吐く泰輔にも、男たちは引き下がる様子を見せない。
「じゃあなんで深夜のツーショ写真が存在してんだよ」
突撃取材ごっこにはもう飽きたようだ。
「複数でいたところを撮られて切り取られただけだ」
「夜中に一緒にいたのは事実なんじゃねえか!」
「仕事のあと関係者と食事をしただけで、すぐに解散した。プライベートの連絡先も知らない」
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