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「お前らは特別だなって、すげーなってずっと思ってた」
俺たちがいた大学の野球部はそこそこ強いところで、実力も意識もそれなりに高い奴らが揃っていたけど、佑輝と泰輔は別格だった。野球センスや技術、フィジカルも一級品で、リーダーシップも持っていた泰輔。プロ志望であることを公言して、誰よりも自分に厳しく、努力を重ねていた佑輝。
俺は野球がめちゃくちゃ好きで、本気でプロになりたいと願っていた。それでも、「俺程度なんてたかが知れてるし」なんて予防線を張って、どこかで頑張り切れなかった自分にとって、二人は眩しくて仕方なかった。
チーム仲は昔から良くて、中でも高校からバッテリーを組んでいる泰輔と佑輝の関係は特別なものだった。会話もなく通じ合う二人だけの世界には誰も立ち入れない。そのことが少し悔しくて、それでいて安心もする不思議な感じだった。
「お前ら二人を中心に仲間が集まって、絆があって。恥ずかしいから言ったことねーけど、あの頃の思い出も、今も続く繋がりも、俺にとっては宝物なんだよな」
「言わなくてもみんな知ってるっての。草壁が一番仲間思いだって。お前がいなかったら、今こうやって飲んだりしてないだろ、絶対」
佑輝にそう言われるのが嬉しくて、だけど少し苦しかった。
「……でも俺は、それを壊したくないばっかりに、大事なことを見ないふりしたんじゃないかって怖くなる時がある」
空を見つめていた佑輝の視線が、ゆっくりと俺に向いた。
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