さよならキラボシ

【After Story】残照

　佑輝のサポートのかいもあってか、この夏からの泰輔は、捕手の役割をきっちりと務めながら、鬼のように打った。それまでの不調が響いてタイトルこそ逃したけど、クライマックスシリーズ以降の活躍は神がかっていたし、日本シリーズの決勝で放った逆転サヨナラホームランは、確実に後世に語り継がれる伝説的場面になった。
　球場に駆けつけ、生でその伝説を見届けた俺たちは、近くの居酒屋で祝杯をあげた。店内は同じように興奮冷めやらぬファンの集団ばかりで、舞い上がり過ぎた下田は、「俺ら、今夜の主役・朝倉泰輔の大学同期です」と叫びまくって注目を浴びていた。
　まだ飲み足りない連中を店に残して、俺は先に店を出た。本音を言えばもう少しだけこの最高の夜に浸って仲間と興奮を共有したかったけど、自宅に嫁が一人きりなのが心配だった。
　俺と一緒のタイミングで佑輝も店を出た。