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◆ ◆ ◆
あれからもう五年も経つんだろうか。
お互いに忘れたことにしたやり取りを、今こうして蒸し返す意味なんてないのかもしれない。
だけど、それでも――。
「後悔してモヤついてるからって、今さら言うことじゃないのかもしんないけど、……思っちゃうんだよ。あの時、本当は俺はもっと踏み込んだ方がよかったんじゃないか……そしたら佑輝はどこにも行かなかったんじゃないかって」
無意識に力が入って、手の中の缶がメキっと小さく音を立てた。
「そのあともさ、お前の心情なんてお構いなしに自分勝手に泰輔と引き合わせたり……本当はそういうの佑輝の負担になってたんじゃないかって、今になって考える」
泰輔がいて、佑輝がいて、二人を中心にみんながいて。一心にそれを望んだ俺の行動は、佑輝の気持ちを蔑ろにしてしまっていたのかもしれない。
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