426人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
佑輝はしばらくじっと俺を見たあと、ふっと表情を和らげた。
「あの時、草壁が何も訊かないでいてくれたこと、本当に感謝してる」
微笑んで見えるのにどこか憂いを帯びた表情は、今でもまだ、……そして多分、あと何年、何十年経とうが踏み込まれたくない問題なのだと俺に知らせた。
「……っ」
ぐっと胸を押されたような感覚に息を詰める。もどかしさと罪悪感のような気分があふれた。それが表情に出ていたのか、佑輝は俺を慰めるみたいに今度ははっきりと笑った。
「俺を探してくれて、ありがとうな」
本当にそう思ってるのか?
迷惑じゃなかったのか?
視線で問い掛けると、佑輝はうなずいてみせた。
それに安堵して緊張していた身体の力を抜くと、佑輝にも伝わったらしく、そっと肩を叩かれた。
最初のコメントを投稿しよう!