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もう日は沈んで辺りが薄暗くなり始めているのに、残った光が雲を照らして輝いている。青とオレンジ色が混ざった空に視線を向けて、佑輝が口を開いた。
「全部捨ててったつもりなのに、本当に大事だったもんは不思議と戻ってくるみたいでさ、だからもう諦めて大事にしようかなって、今はそんな感じ」
その言いざまに苦笑を浮かべる。
「諦めてって、しゃーなしかよ」
「しゃーなしだよ」
俺のセリフをなぞった佑輝の言葉は、軽いけど潔くも聞こえた。
「まあ、そういうわけで泰輔とはうまくやってるから心配すんなよ」
「へ……ああ、うん?」
その言葉の真意を測りかねて、語尾が疑問形になった。
「草壁、今日ずっと気にしてただろ。まゆりんの話題」
「え、あ……へ?」
俺の間抜けな返事に、佑輝が「ぶっ」と吹き出す。
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