【After Story】残照

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「まゆりんの名前が出るたびに、俺の方チラ見して動揺してるからさ、もう気になって」 「え、いや……確かにそわそわしてたけど……え?」  もしも、俺の想像した通りに、今の佑輝たちがそういう意味も含めて一緒に住んでいるのなら、まゆりんの報道はあまり喜ばしいものじゃないかと思ったのだ。水面下で大問題に発展している可能性だってあったし、そんなタイミングで呑気にビールやら黒毛和牛やらを持って、集団でお邪魔していいのかどうかと、少しだけ心配していた。  情報の処理が追い付かず、テンパる俺の隣でビールを一口飲んだあと、佑輝がさらっと言った。 「泰輔が俺にベタ惚れで他は眼中にないの知ってるし」  だから心配不要、と笑う佑輝に、驚き過ぎて声も出せなかった。  そうなのかもしれない、とは確かに思っていた。だけどそれは結局自分の想像の域を出なかったもので。不意打ちで本人に肯定されてパニック状態だった。  目を見開いて硬直する俺に、佑輝は「すごい顔」と言ってまた吹き出す。 「あ、でも一応聞かなかったことにしといて」  まだ動揺から抜け出せないまま、どうにか「わかった」と頷いた。
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