【After Story】残照

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「ありがとな、鍋まで全部片付けてくれて」  鍋やコンロもすでにしまわれ、食洗機が回っている。 「いや」  泰輔は短く答えて、俺の視線から避けるように冷蔵庫へ向かった。俺は保存容器を手にその後ろをついていく。 「二段目、ほぼ酒で埋まってて笑ったんだけど。買い過ぎだろ」  がっしりと逞しい泰輔の背中越しに、冷蔵庫を覗き込んだ。庫内を占拠するビールや酎ハイの缶は、飲み会の途中で泰輔たちがコンビニで買い足してきた分だ。泰輔以外のメンツが本能のままカゴに詰め込んでいる様子が目に浮かぶ。 「ああ」  泰輔の返答は変わらずこの上なく簡素で、会話のキャッチボールが成立しない。  腕を伸ばして、巨体に割り込むように容器を上段のスペースに突っ込む。離れようとした時、「佑輝」と名前を呼ばれた。 「もう少し、飲まないか」  俺の方ではなく、開けっ放しの冷蔵庫と向き合ったまま泰輔が言う。
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