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その日俺は帰りが遅くて、泰輔は翌朝早くから出掛ける予定があった。だけど、ひどく真面目な顔で俺を待っていて、週刊誌の記事は事実無根だと訴えてきた。
仕事の延長の席だったこと、複数だったことを説明された俺は、確か――。
『ふーん、そうなんだ。有名税ってやつだな』
そんなようなセリフで答えて、「また下田たちが大はしゃぎしそう」と笑った記憶がある。
「疑われてないんだとわかったら、ほっとしたけど……すぐにまた怖くなった」
「え、なんで?」
泰輔はすぐには答えなかった。十秒くらい迷う素振りを見せたあと、とてつもなく言いづらそうに切り出した。
「……そもそも佑輝は、俺に大して興味がないのかもしれないと思ったからだ。俺が誰と交流を持とうがどうでもいいのかもしれないと……」
あまりにもネガティブ過ぎではないだろうか。
強張った横顔をぽかんと見つめていると、泰輔が慌てて付け足す。
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