【After Story】残照

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 触れるだけのキスをして顔を離す。ついでに頬を摘まんでいた指も解放したら、泰輔は痛みを堪えるような顔で見つめてきた。 「そんな目で見んなよ、……焦げそう」  熱のこもった瞳に苦笑すると、今度は泰輔が顔を寄せてくる。背に回った腕に抱き寄せられながら、再び唇が重なった。  啄ばまれて、吸われて、差し入れられた舌を受け入れる。 「……ン」 上顎をこすられると、鼻に抜ける頼りない声が漏れた。 泰輔は顔を傾けて、より深いところまで入り込む。俺の中の全部を探ろうとするような動きを見せていた舌先は、やがて標的を舌に定めた。  痺れるまで舌を絡ませ合って、合間に蒸れた息を吐いたら、その吐息すら逃すまいとするみたいに唇を覆われる。舌を啜られる感触に肌が粟立った。  口の端から混ざり合った唾液が垂れて拭おうとすると、その前に泰輔の舌が舐め取っていく。
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