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「……お前のキスは、ねちっこい」
いつも色々濃い方だとは思ってはいたけど、今日は特に執拗な気がする。
乱れた呼吸で文句を言ったら、不安げに眉根を寄せた泰輔が、「嫌か?」と尋ねた。
「別に……けどなんか、食われそうな気分?」
正直、嫌ではない。だけど、そのうち唇や舌を噛みちぎって、咀嚼しだすんじゃないかという怯えが頭をよぎる。
「……食ったりしない」
「なんで即答じゃないんだよ」
答えるまでに間があって、ちょっと怖いと思いながら笑った。
ソファに片足を上げて、俺と向き合っていた泰輔が床に下りる。俺の正面に立って覆いかぶさってくる泰輔を、肩を押してとどめた。
「すんなら、ベッド行かない?」
泰輔は俺の提案に「ああ」と答えつつも、進行を止めない。
「おい、こら聞いてん……っ、ぅ」
ねっとりと耳を舐められて、びくりと肩が竦んだ。俺の反応は泰輔にも伝わって、さらに耳殻を攻められる。
「佑……佑輝」
俺を呼ぶ声に切羽詰まったものを感じて、寝室への移動を諦めた。
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