第1章

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「いやいや充分すげえって。つーか指名されるってことがすげえ訳だよ。もっと言っちまえばドラフト候補に入ることがすげえ!」 「おい、おめえら! サインや写真をゲットしとくなら今だぞ! サイン一枚五百円! 写真撮影は一回千円だ!」  乾杯の音頭をとった草壁が再び立ち上がり、人差し指を天井に突き上げた。「ワンナウト」の仕草だ。 「金取んのかよ! つーかなんで草壁が仕切ってんだよ」 「俺はキミらと違って、現・チームメイトだからな! コーチからもよろしくって頼まれてんだよ」  適当を言う草壁に、一同が「うそつけ!」と異議を唱える。その光景を見つめて笑っていると、不意に横からとん、と肩を叩かれた。 「佑、幹事ありがとな」  騒がしい室内でちゃんと声が聞こえるように、俺の耳元に顔を寄せた泰輔が礼を告げた。 「結局草壁が仕切ってくれてるけど」  苦笑をこぼすと泰輔も同じように笑った。 「そもそも礼なんていらないし。泰輔の祝いの席を俺がお膳立てしなくて誰がするんだよ」  少し拗ねた風に言ったら、泰輔は嬉しそうに頷いた。
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