第1章

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 俺、青山佑輝(あおやま ゆうき)と朝倉泰輔はかれこれ十年以上の付き合いになる。俺がピッチャーで泰輔がキャッチャー。高校一年でチームメイトになってから、大学卒業までずっとバッテリーを組んでいた。  俺は怪我の多い投手だった。高校から七年の間も、何度も何度もケガをして、そのたびに野球を辞めようと思った。そんな俺をいつも必死に引き止めてくれたのが泰輔だった。 『俺のバッテリーはお前しかいない。絶対によくなる。諦めるな』 力強いその言葉にどれだけ救われたか。  同い年なのに頼りがいがあって男気に溢れていて、自慢の相方だった。口数は多くないけれど、いつも俺やチームメイトのことを考えてくれていた。背中で引っ張っていってくれるような、キャプテンシーにあふれた男だ。身体もひょろく、大したスピードも球種もない俺のピッチングを、うまく操って何度も勝たせてくれた。卒業と共に野球人生にピリオドを打った俺とは異なり、泰輔は誘いがあった自動車製造会社の野球部に所属し、三年で社会人野球界ナンバーワン捕手と言われるまでになった。  道は別れてしまったけれど、俺は今でも唯一無二の親友だと思っているし、きっと泰輔もそう思ってくれているはずだ。
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