第1章

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 泰輔とは卒業後もたまに会って飲んでいたけど、頻度はそう高くはない。最後に二人で飲んだのは、何ヶ月か前……あれは社会人野球の夏の宴、都市対抗野球大会が終わった直後だ。泰輔がドラフトに掛かるかどうかの大事な試合だから、気になって球場まで足を運んだ。チームの優勝は逃したものの、泰輔はしっかり攻守で実力を見せて、指名を確実なものにした。  大会のあと、「応援に来てくれたお礼」と、泰輔が飲みに誘ってくれた。練習や自主トレで暇が滅多にないだろうに、こういう律儀なところが好きだなあと再認識する。  泰輔が注いでくれた冷酒を一口飲み、あふれる笑顔を抑えきれないままで呟いた。 『楽しみだな』 『何がだ?』 『何ってドラフトだよ』  自慢の元相方の実力が、ようやく全国に伝わるのだと思うと嬉しくて仕方ない。自分まで誇らしい気分になる。 『まだ先だ。何があるかわからない』 『とか言って、この間の試合結構来てたんだろ、スカウト』 『俺が目当てとは限らない』  当然会場で声だってかけられているだろうに、泰輔はいたって冷静だ。
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