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『でも俺も、生で試合観てたら久々にやりたくなったな』
スナップをきかせるように手首を振って見せると、泰輔は嬉しそうに笑った。
俺は、小学生の頃からプロになりたいと願い、なれると信じて打ち込んできた。だけど大学二年の時に自分の限界が見えた。俺はここまでだと。結局のところ、ほんのひとにぎりの中へ進める実力もなかったし、怪我を繰り返し、身体と心がもうもたなかった。卒業までは部に在籍して現役を続けたけど、それ以降はすっぱりやめる決意をした。限界が見えた時に退部を選ばなかったのは、泰輔の必死の説得に心を打たれたからだし、俺だって他の誰かに『泰輔の相方』を譲るのも嫌だと思ったからだ。
部を辞めなくてよかったと思うと同時に、強い後悔もある。もしも俺がもっと早くに野球を手放していれば、泰輔のプロ入りはもっと早かったかもしれない。
『俺と組んでたせいでプロ入りが遅れたかもな』
滲んだ後悔をそのまま口にする。俺ではなく、大学……もしかすると高校でもっといい投手と組んでいれば、ドラフトに掛かっていたかもしれない。
『佑、怒るぞ』
低い声と共に鋭い視線が突き刺さる。
『もう怒ってんじゃん』
泰輔が怒っているところなんて滅多に見れない。それでも俺がそんなことを言えば泰輔が怒ってくれると心のどこかでわかっていて、あえて口に出す俺は性格が悪いのだろう。
『お前と七年もやってたから今の俺があるんだ。それにたとえ高校や大学で声が掛かってたとしても、身体ができてなかった。あのままプロになってても使い物にならない』
『ふーん、じゃあ今プロになってソッコー一軍になったら俺のお陰?』
冗談のつもりで言ったのに、泰輔は「そうだな」とあっさり頷いた。
『そこは否定しろよ、俺が恥ずかしいだろ』
『事実だから否定のしようがない』
神妙な顔で冷燗を煽る男に、可笑しさと嬉しさが湧いてきて、思わず噴き出した。生真面目で謙虚な部分は何年経っても変わらない。
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