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『今度、みんな誘って草野球でもやろっか』
妙にハイになって、上機嫌で泰輔に提案する。
『あー、でも泰輔忙しいから無理かもな』
そもそもプロになろうかという選手を、草野球に引っ張り出すこと自体に問題があるのかもしれないが。だけど泰輔は即答をする。
『時間を作る』
「マジで?」とおどけて訊ねると、真面目な顔で「マジだ」と頷いてみせる。
『ウチの近所に河川敷野球場があるぞ』
『へえ、そうなんだ! あ、そういや春に引っ越したって言ってたっけ。でも来年にはプロだし寮生活だろ? 引越し損じゃん』
『だから、まだなれるって決まった訳じゃ……』
『なれない訳ないだろ。俺が保証するって』
力強く言い切って拳を作ると、泰輔は一瞬呆気に取られたような表情を浮かべ、そして「サンキュ」と笑った。
『泰輔がプロ入り決めたらさ、俺も覚悟決めるよ』
『え?』
なんのことだ、と泰輔の瞳が問う。泰輔の未来が明確なものになるにつれ、自分の中のぼんやりとした選択肢が具現化されていくような気がした。親友が新たな一歩を踏み出すのなら、俺も一歩を踏み出す時期なのだと思えた。
『やるならシーズンオフにするからさ、友人代表のスピーチは頼んだぞ、相棒』
茶化すように告げたら、泰輔はひどく驚いた顔をしたあと、笑って頷いた。
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