プロローグ

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 王国の中でも辺境に位置する街、その一角に『水鳥の宿り木』という宿屋がある。  巷で人気の宿屋だ。細かい所まで気配りのされたサービスや部屋の居心地などに定評があるが、何よりの理由は宿屋で働く娘の人気だ。  銀髪をロングに伸ばした妖精のような美少女で、名前をイズ・ミレイムという。誰もが二目も三目も奪われる可憐さを身に付けていて、ある人に言えない過去を抱えながら今日も宿屋の仕事に勤しんでいる。  そんな彼女の注目を今日も独占している青年がいた。  黒髪に薄いフレームのメガネをかけていて、名前を長星ユキラと言う。少し前までは現役の高校生をしていたが、いろいろあって異世界にやって来ることになった。そして今は『水鳥の宿り木』に泊まっている。 「ユキラさん、何を描いているんですか?」  食堂となっている一階にて、仕事が一段落ついたのでぴょんぴょんしながら近づいて来るイズ。それに対してテーブル席に座ってずっと手を動かしていたユキラは、描いていたイラストを自信有り気にイズに見せた。 「これは……私ですか?」 「そうだ。我ながら中々の出来栄えだと思う」     
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