偶像

4/14
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「ちょっとぉ。ハクから聞いたんだけど」  翌日放課後。学校内の図書館にて。  参考書を広げるセイの前に立つ、女子の制服を纏った人影。  セイは相手を見ることなく、参考書に集中している。  相手も特に気にした様子もなく、向かいの椅子に座った。 「ボクの事、可愛くないって完全否定……どういうこと?」  「……図書館は、お静かにお願いします」 「う……そこは謝る。ゴメン」  顔をあげると、長いセイの前髪の向こうに、しゅんとした顔のSYUKA(シュカ)こと、小早川(こばやかわ)朱夏(しゅか)がいた。 「……今日も仕事じゃ、なかったんだ」  淡々と喋るセイに対し、自分に興味を持ってもらえたと感じた朱夏は、先ほどまでの不機嫌さはどこへやら、パァっと表情を輝かせ、ニコニコと笑う。 「ドラマの合間の補習だよん。……いやー、しっかり絞られたし、これからもう一時間ほど絞られる予定」  だろうな……ため息とともに、鞄の中から、数冊のファイルを投げるように渡す。 「サンキュ! セイ! 愛してる!」 「……復習のついでだ。あと、何度も言うが静かにしろ!」     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!