偶像

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 机の上に飛び乗り、覆いかぶさるように抱きついてきた朱夏に、反射的に残りのファイルの束を相手の顔面に押し付けて、セイは抵抗。 「ちょっとぉ。ボクの商売道具(かお)に何してくれてんの!」 「そっちこそ、時と場所を考えろッ!」 「はーい。ストップストーップ。ここで喧嘩はやめようねー」  喧嘩に発展しかけたところで、一人の女子生徒が、二人の間に割って入った。  幼馴染兼、クラスメートの江藤(えとう)葉月(ようげつ)。 「セイ。そろそろ師匠んトコ行く時間じゃない? んでもって、シュカ。休憩終わり。補習の続きの時間だよ」  ハッと気がつき、セイは周囲を見回す。  自業自得とはいえ、ざわつく周りの視線が痛い。そして、壁の時計が示す時刻は四時……。 「あーヤダヤダ……数学嫌い……」  ぶつくさ呟きながら、セイからもらったファイルの束を抱え、ヨロヨロと朱夏が図書館から出ていく。 「愛が重いね……」 「ほっといてくれ……」  苦笑を浮かべる葉月に、セイは頭を抱え、ため息を吐いた。 「んじゃ、セイ。師匠にヨロシクね」 「ん? お前も来るんじゃないのか」  セイの荷物から竹刀の入った袋を手渡し、ひらひらと手を振っていた葉月だったが、お手上げとばかりに両手を上げて、苦笑を浮かべる。     
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