偶像

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「誰だよお前! ボクのセイ(・・・・・)に、何してくれてんだ!」  怒り過ぎて朱夏の目には、涙が滲む。  そんな朱夏の言葉に、男はショックを受けたように、あんぐりと口を開けた。 「あー、朱夏。どうどう。落ち着こうか。お兄さんも、ちょっとちょっと……」  葉月がちょいちょいと、男に手招きをする。 「薄暗いから難しいかもだけど、セイの顔、よーく見てみて」 「はぁ?」  (いぶか)しむ男に向かって、葉月はドンっと、セイの背中を押す。 「アンタもほら。恥ずかしがらずに、ちゃんとその顔、しっかり見せてあげなさい!」  男にしては小柄なセイをのぞき込む男の顔が、徐々に蒼くなる。 「な……んなぁ?」  鼻と頬を押さえつつ、不機嫌そうにジトッと男を見上げ、睨むセイの顔。  怒りの表情で男を睨む、朱夏の顔。  並ぶ二人は、背格好も顔も、瓜二つだった。    男は思わず後ずさり、そして回れ右をすると、一目散にその場から駆け出す。 「ゲント! いた! シュカとセイ兄ぃ!」  近づいてきた二人乗りのバイクの後ろから、ハクが飛び降りた。 「高卒後の進路志望、『セイ()ぃと一緒に、二人そろって警察官』を、なめんじゃないよっと!」     
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