第18章 スイーツは別腹

40/41
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
お前と一緒だとよく眠れるんだ、だからいつでもここにいていいよって頬を寄せて囁いた。体温を分け合って二人で眠った。それもただ、身体を思い通りにするため調子を合わせてただけだったの? わたし松葉くんだけだよ、って何度も言ったのに。そんな言葉も彼には何の意味もない、響かないものだったのかもしれない…。 わたしはますます深く自分の腕の中に顔を沈めた。もう何もかもどうでもいいや。 絶対に誰にも気は許さない。表面だけ関係していれば気持ちは乱されないなんて嘘。触れ合って身体を深く交えれば情だって動くし、特別な意識も湧く。だったらもう二度と誰とも触れ合わない。 わたしはわたしで一人でいい。身体を慰め合って空虚を塞ごうなんて甘い考えは捨てよう。何もなかった時よりもっと酷いことになるって今更になってわかったから。 もうほんとにこれでわたしには何もないな。今すぐに、くたくたになるほど身体を虐められて頭がぽかんと真っ白な状態になれたら何も考えなくて済むのに、と考えて虚しく首を横に振った。もうそんな麻薬は使えない。 わたしは中毒から醒めてしまった。そんなに小手先のごまかしはなんの意味もない。わたしは結局、自分ひとりでこの世の中と向き合うしかないんだ。 特別な相手も好きな人も慰め合って孤独を埋める存在もどこにも存在しない、ただ何もなく延々と地平線まで広がる終わりのないただの荒地。     
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!