アクアリウムの中の揺らぐ水・第9話

第18章 スイーツは別腹

つまり、わたしはきちんとした人格を持った人間の女性とは最初から思われてなかった。ただいつでもやらせてくれる都合のいい便利な肉体に過ぎない。セックス専用のペットか何かのポジションだったんだと思う。
ペットなら、確かに恋人ができても存在は競合しないし。わたしを親切に扱って、気遣ってる表情を見せてはいたけどそのくせ内実では恋した大切な相手を住まわせる特別な場所はきちんと空けて、そういう人が訪れるのを待っていた。わたしのためにはもっと外側の、心の領域の外れの小さな犬小屋。晴れて愛する女の子を中心に迎え入れて、そのままペットもそこで飼う。だって、人格も何もない、ただの欲望を処理するための心のない肉の塊に過ぎないから。
そんな状況でも誰も傷つけることはない。桃は快楽さえ与えてやれば喜んで飼われ続けるに決まってる。セックスっていう餌はちゃんと間を置かずにやるから。そうすれば何の不便もないだろ？
寝返りをうってうつ伏せになり、腕の中に顔を埋めた。
そんな風に思われるようになったのはわたしもいけなかったのかも。彼に特別な感情を持ってないことを特に隠しもしなかった。身体だけが目的で付き合ってる、と受け取られても無理なかったのかもしれない。
だけど、もしわたしに別に誰か好きな人ができたら。絶対に即、そのことを正直に打ち明けて彼とはきっぱり関係を絶ったと思う。だって、それしかない。