第18章 スイーツは別腹

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恋愛感情なんかなくたって、松葉くんのことを。欲情を処理するための都合のいいただの肉体だなんて思えない。松葉くんは松葉くん。ちゃんと人格のある、ひとりの人間だよ。 わたしの身体を慰めるだけの、感情のない便利な機械みたいなものだなんて。恋人と居場所が被らない別物だなんて。わたしなら絶対、考えないのに。 だけど、彼にとってのわたしは、そういう存在じゃなかった。気が向けば便利に身体を使って欲情を処理してもただびくびく悦ぶだけの、セックスに特化した生身の人形に過ぎなかったんだ…。 桃は可愛いな、って何度も言ってたのに。優しく髪を撫でて、疲れてないか、お前はいつも頑張り過ぎだよって心配してる素振りも見せてたのに。他の男になんか触らせない、お前は俺のものだよって抱きしめて熱っぽくキスを交わしたのに。 あれも全部ただの見せかけだった。ほんとはわたしのことを感情も人格もあるひとりの女の子だと思ってなんかいなかった。そうやって表面上優しくしておけば素直にやらせてくれるから。便宜上そう接しておけばわたしが何でも言うことを聞くから。 わたしの方はそうは受け取ってなかった。恋愛感情こそなくても、彼は友達だし他の人より少し親しい、特別な相手だとは思ってた。最後の方は少し気が許せなくなってたのは確かだったけど。肌を接して身体を預けても大丈夫な唯一の人だと思ってたのは事実だったし。     
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